寒夜の即事(天 43)

吟譜(PDF)

作者:寂室元光

(一二九〇~一三六七年)・鎌倉時代後期から南北朝時代にかけての臨済宗の僧。美作高田の出身。俗姓は藤原氏。諱は元光。道号は初め鉄船と号したがのちに寂室と称する。

近江守護六角氏頼の帰依を得て、永源寺の開山となった。師・中峰の隠遁的な禅を受け継ぎ、世俗から離れ、生涯黒衣の平僧として過ごした。時の天皇や室町幕府から京都天龍寺・鎌倉建長寺などへ拝請されたが、受けることなく永源寺に隠棲した。詩・偈・墨跡は特にすぐれ、重要文化財に指定されている。

語釈

*即事・・・その場で直ぐに感じたものを詩にすること。
*三更・・・五更の一つ。今のおよそ午後十一時から午前一時。子の刻に当たる。

通釈

冬枯れの林を風が吹き霜が降りて月光が冴える寒い夜、来客でつい話し込んで零時を過ぎてしまった。
炉辺に火箸を置いて芋を焼くのも忘れ、耳を澄ませば落ち葉の音が雨のように聞こえる

範吟

範吟 鈴木精成