訣別(天 77)

吟譜(PDF)

作者:梅田雲濱

(一八一五~一八五九年)(文化十二年~安政六年)・幕末の尊皇攘夷派の志士。若狭小浜藩の藩士。嘉永六年(一八五三年)米艦の来航後、露艦が来航しそれを討つために起ち上がったときの詩。安政の大獄で死ぬ。通称は源次郎。雲濱は号。安政五年九月の大獄で逮捕されて、翌六年江戸の牢内で病のため没す。年四十五歳。

語釈

*訣別・・・・・いとまごいをしてわかれること。
*病牀・・・・・病人の寝床(ねどこ)。病蓐。病床。
*挺身・・・・・身を抜き出して進む。率先する。
*戎夷・・・・・(西東の)異民族。夷狄。ここでは、露艦のことになろうか。
*皇天后土・・・天の神と地の神。天神地祇。

通釈

妻は病に伏し、わが子は飢えて泣いているが、自分は一身を投げ出して、外敵を打ち払おうと固く心に決めている。今朝の別れは、死別となるか、生別となるか自分の誠を尽くす心は、天地の神神だけが知るところであるが、それで十分ではないか。

鑑賞

雄々しい詩で作者の意気がよく伝わってくる悲壮で雄渾な神が体を越えた志士の詩である。転句、結句で節奏に苦しんだか。佐野竹之助『出鄕作』「決然去國向天涯,生別又兼死別時。弟妹不知阿兄志,慇懃牽袖問歸期。」 に趣は似ている。

範吟

範吟 鈴木精成