酒に対す(天 94)

吟譜(PDF)

作者:白居易

(七七二~八四六年)中唐の詩人。日本では「白楽天」の名でもよく知られいる。陝西省渭南県の人。聡明で生後五、六か月で、「之」「無」の字を覚えていたという(?)。五、六才で作詩を学び、十五、六才で都に出て、大いに認められた。しかし、四十四才の時讒言(ざんげん)され、江州・司馬に左遷された。八二〇年都に戻ったが政治向のことで再び上疏したが、聞き入れられず、自分から地方に出ることを願い出て杭州の刺史に任ぜられた。そこでは、西湖に「白堤」を増築して眺望をよくする一方州民の飲料水や灌漑用水の確保に努力した。五十五才のとき、病気のため洛陽へ帰り、閑職についたが八四二年退隠した。晩年は仏教に帰依し、香山寺の僧如満らと交わったが、七十五才で没した。

語釈

*蝸牛角上・・・蝸牛はかたつむり。かたつむりの角の上。
*石火光中・・・火打石のカチッと光る火の中。一瞬のうち。
*随富随貧・・・富む者は富むなりに、貧しい者は貧なりに。
*且・・・・・・まあまあ~、ちょっとの間。
*開口笑・・・・おもいっきり口をあけて笑う。「人は上寿は百歳、中寿は八十、下寿は六十。その中に口を開きて笑う者、一月の中、四、五日に過ぎざるのみ」(荘子)による。
*癡人・・・・・痴人とも書く。ばか者、おろかな人。

通釈

世の中の人はかたつむりの角の上の小さく狭い所で、いったい何を争うのか。火打ち石の火がぱっと火花を散らす、その一瞬の間に人はこの世に生きているようなものだ。だから、金持ちは金持ちらしく、貧乏人は貧乏人なりに、分に応じて、ま~しばらく楽しもう。大きな口を開いて笑わないやつはバカ者だ。

範吟

範吟 鈴木精成