四海波(天 111)

吟譜(PDF)

作者:本宮三香

(一八七七~一九五四)明治・大正 昭和の漢詩家。千葉県佐原市に生まれる。名は康三、字は子述・風土子、三香は号。幼少より漢詩を好み、依田学海や服部胆風に学ぶ。日露戦争に従軍、第三軍に属し戦場でも詩を作る。明治三九年故郷へ帰り、悠々自適の生活を楽しむ。のち漢学者・評論家として活躍、大正二年に「江南吟社」を設立した。昭和十六年、朝鮮総督府に招かれ、満州に吟遊行脚。多くの漢詩を作った。水郷吟詠会を組織し、木村岳風先生の日本詩吟学院の講師を委嘱されるなど、作詞及び詩吟の普及に力を傾けた。
作詩の数は五千或は一万余とも言われる。酒と詩を愛し、昭和二九年十二月二十九日に没す。享年七十七歳。

語釈

*四海波恬・・・「恬」は安らか。天下が良く治まり平和なこと。
*瑞色・・・・・おめでたいさま。
*相生の松・・・雄松女松一緒に生え始める松のこと
*高砂・・・・・世阿弥の謡曲で祝言ものと言われる。肥後阿蘇の宮の神主友成が都に上る途中、高砂の浦(現在の兵庫県南部)で景色を眺めていると、老夫婦が通りかかり、高砂と住吉の二本の松を「相生の松」という謂れを語って去る。友成が住吉へ行くと明神様が現れ、御代を祝って神舞を舞ったという話。

通釈

天地四方、のどかに目出度く明け始めた。雄松・女松仲良く植えられた相生の松も緑濃く、風一つ無い佳き日である。謡曲の「高砂」の一節を謡い上げると、喜びが極まりなく込み上げてくる。新郎新婦は微笑を含んで夫婦の固の杯を交わして、固い契りを神前に誓った。誠にめでたい限りである。