城山(天 114)

吟譜(PDF)

作者:西道仙

(一八三六~一九一三年)天保七年熊本県天草に生まれる。名は喜大(きだい)、号は琴石(きんせき)、字は道仙。 明治五年学制頒布以来多数の子弟を擁して教学の道に挺身し、また明治二十五年には 長崎文庫を開き長崎郷土史に寄与すること大きく、長崎区会議長・衛生委員会幹事長・医師会 副会頭などを歴任し大正二年七月七十八歳にて没す。寛斎(かんさい)と号し医師の儒者として世に知られている。

語釈

*孤軍・・・・援軍のない孤立した軍隊
*里程・・・・道のり
*壘壁・・・・とりで 敵を防ぐための城壁
*故郷山・・・城山をいう ・鹿児島市の北部にある高さ100メートルの丘・裏の岩崎谷には西郷隆盛が最後の五日間起居した洞窟がある

通釈

孤立無援の軍勢で奮(ふる)い闘って、官軍の重囲を突破し、故郷の城山に帰りつく ことができた。百里もの道のりを敵のとりでの間を脱出してきたのである。やっと帰ってきたが、たび重なる戦いで、わが剣はすでに折れ、わが馬もたおれて死んでしまった。 もはやこれまでである。今は秋風の中、懐かしい故郷の城山で、わが骨を埋める身となった。

範吟

範吟 鈴木精成