春暁(天 124)

吟譜(PDF)

作者:孟浩然

(六八九~七四〇年)・中国唐代(盛唐)の代表的な詩人。襄州襄陽(現在の湖北省襄陽市)出身。字も浩然。一説には、名は浩だ言われる。若い頃から各地を放浪し、義侠の振る舞いで人々と交流した。また後漢の龐徳公や後年の皮日休ゆかりの鹿門山(襄陽市)に隠棲したこともあった。玄宗の世となってから長安に赴き仕官しようとするが、科挙に及第していないのでかなわなかった。
しかしながら、孟浩然を気に入った韓朝宗との約束をすっぽかして朝廷への推薦をだめにしたり、いざ玄宗の前に出ても不平不満を詩にして玄宗を怒らせるなど立身出世には関心が薄かったようにもみえる。孟浩然の詩は広く知れ渡り、王維・李白・張九齢らと親しく交際した(李白には「黄鶴樓送孟浩然之廣陵」という作品がある)。七四〇年、背中にできものがあって調子の悪かった孟浩然は、訪ねてきた王昌齢を歓待するあまり容態を悪化させて亡くなった。自然を題材にした詩が評価されており、詩のなかに人生の愁いと超俗とを行き来する心情を詠みこんでいる。日本では五言絶句「春暁」が特に有名である。詩の特徴から王維と孟浩然は「王孟」と並称された。『孟浩然集』がある。

語釈

*春暁・・・春の夜明け。
*春眠・・・春の季節の睡眠
*曉・・・・あかつき。あけぼの。夜明け。
*處處・・・ところどころ。ほうぼう。いたるところ。
*啼鳥・・・鳴く鳥。さえずる鳥。
*花落・・・花が散る。
*夜來・・・昨夜。夜間。また、昨夜来の意

通釈

春の眠りは心地よいので、ついつい寝坊をしてしまい明け方が分からずに眠り呆けてしまった。方々から鳥のさえずりが聞こえてくる。昨夜は、雨風の音が激しかったが、花はさぞたくさん散ったことだろう。どれくらい散ったことだろうか、多いことだろう。

範吟

範吟 鈴木精成