児に示す(天 131)

吟譜(PDF)

作者:陸游

(一一二四~一二〇九年)・中国南宋前期の人、号は放翁、官職に在り、詩人として南宋四大家の随一とさる。三十二歳から八十五歳の死に到る までの五十年間の詩作「剣南詩稿」八十五巻をのこし、総数一万首、晩年多作にして、その詩ことごとく充実す。 愛国の詩人として常に北方平定を願っていたが果たされなかった。

語釈

*九州同・・・中国全土の統一、そのためには北中国を占領している金を追いだ さなければならない。九州とは古代中国全土を九つの区域にわけられていた伝説による呼び名。
*王師・・・・朝廷から出兵する軍隊。官軍。
*中原・・・・中国中央部の平野の黄河流域の一帯
*乃翁・・・・汝の翁、父の自称 乃父(だいふ)、乃公(だいこう)に同じ

通釈

死んでしまえば万事が空しくなってしまうとかねてから知りぬいてはいる。それでも天下が統一されるのをこの 目で見ずにおわるのが悲しくてならない。やがて帝王の軍隊が北に進んで、中原の地を平定した日にはわが家の祖先のまつりをして、この父の霊に報告す るのを忘れてはならぬぞ。

備考

陸游は一般の詩人ではなく、愛国の至情に燃える詩人であり、放翁辞世の詩である。金の侵略を受け、中原の地を奪われた国家の命運を思いやり、死に臨み、愛国の至誠やみがたき情をうたったもの。

範吟

範吟 鈴木精成

素読 鈴木精成