蜀中九日(天 137)

吟譜(PDF)

作者:王 勃

(六四九~六七六年)初唐の詩人。字は子安(しあん)、父は王福(おうふく)、祖父は王通(おうつう)といい学者の家の出である。山西省河津(かしん)県絳州(こうしゅう)龍門の人。幼時より詩文にすぐれ、 二十歳前に高宗(こうそう)の試問に応じ朝散郎(ちょうさんろう)の官をさずけられ、沛王府(はいおうふ)の修撰(しゅうせん)という職についた。のち高宗の怒りを買い蜀の国に流謫(るたく)される。 父の王福も同時に交趾令(こうちれい 今の北ベトナム)に左遷された。王勃は大赦(たいしゃ)で出獄し父をたずねて南方に旅に出、南海の海に落ち死す。 時に二十八歳という。

語釈

*蜀中・・・・蜀の国の意。
*南中苦・・・南中は南方の地区をさす ここでは蜀のことで 蜀の生活のわびしさ。
*鴻雁・・・・大きな鴻小さな雁 秋になると南方の地へ渡ってくる

通釈

九月九日重陽(ちょうよう)の節句に、故郷を望んで望郷台に登った。今日はよその国のよその宴席で、旅立つ友を送る杯をくみかわしている。 私の気持ちはもう南の地での暮しにあきていや気がさしているのに、あの雁の群れはなぜ北を捨てて南に飛んでくるのだろう。

範吟

素読・範吟 鈴木精成