春日偶成(天 141)

吟譜(PDF)

作者:夏目漱石

(一八六七~一九一六年)(慶応三年~大正五年)・江戸牛込に生まれる。幼名を金之助という。明治・大正時代の小説家、英文学者。生家貧しくして、度々里子にだされた。 二松学舎、成立学舎に学んで、漢学、英語を学ぶ。東京大学英文科卒。イギリスに留学、のち東大講師、朝日新聞社に入社。「坊ちゃん」「吾輩は猫である」をはじめ数々の名作を残し大正五年十二月没す。歳五十歳。

語釈

*道・・・・云(い)うと同義。 動詞。
*風塵・・・人の世。 俗世間。
*軒・・・・てすり。 らんかん。
*野趣・・・素朴な自然のおもむき
*清晝・・・世間から。 かけはなれたしずかな真昼。

通釈

俗世間の煩わしさの中で、すっかり老(ふ)けてしまったと嘆いてはいけない。わが家の縁側の春の風情 は、自然の清新ないなかのおもむきがあふれているから。竹藪は深々と茂り、鶯があちこちでさえずっている。私は閑かなひる日なか、横になって鶯の声を聞きながら春の情趣 を味わう事が出来るのである。

範吟

範吟・予習 鈴木精成