中庸(天 173)

吟譜(PDF)

作者:元田永孚

(一八一八~一八九一年) 字は子中(しちゅう)、伝之丞(でんのじょう)と称し東野(とうや)と号す。 幕末明治の漢学者。熊本市に生まれる。幼にして学を好み十三歳にして詩を作り、進んで 修身治国の学に志す。明治四年宮中に入り累進して、明治天皇の侍講(じこう)となる。人に接する時 は春風のように和気靄然(あいぜん)として、聖上の恩遇厚く時々共に吟詠を楽しむ。帝国憲法、 皇室典範、教育勅語の草案起草にも加わり、「幼学綱要」の編纂にあたった。明治二四年、特旨 により男爵を授けられた。著書に「東野詩集」がある。明治二四年一月七十四歳にて没す。

語釈

*中庸・・・・・行き過ぎも不足もなく ほどよいこと すなわち右にも左にも 偏らず 中道であること
*勇力・・・・・真の勇気でなく ここでは野蛮な勇気を言う
*文明・・・・・人知が発達し世の中が開けること
*才子・・・・・知能がすぐれた人 気がきいて抜け目のない人
*天下萬機・・・世の中の事は何事でもの意
*歸一誠・・・・誠心誠意 誠の一字につきるということ

通釈

あまり勇気をたのみ、腕力にたよる男は、かえって自分の力で自分がたおれるものである。 また、あまり文明かぶれして自分の才能に溺れる者は、世の中の華美に酔うて事を誤ることが多い。  だから皆さんにお勧めしたいことは、右にも左にも偏らず、常に中道を選んで進んで行かれること である。そして世の中のことは何事にも誠心誠意でやれば間違いはないのである。

備考

この詩は、特に物事に激しやすい青年に対し、処世を戒め、世の中のことは 何事でも誠がなければ成功しないという事を教えたものである。・承句は対句となっている。

範吟

素読・範吟 鈴木精成

伴奏

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