白楽天の江州司馬に左降せらるるを聞く(天 203)

吟譜(PDF)

作者:元稹

(七七九~八三一年)中国,中唐の詩人。字は微之。河南(河南省洛陽)の人。十五歳で明経科に抜擢(ばつてき)された秀才で,八〇六年,皇帝による特別試験に首席及第。初め宦官(かんがん)に反抗したが,のちには追従し,後世非難を受けた。官界での地位は宰相に至ったが,政争に絡んで罷免され,地方官を歴任したのち,武昌(湖北省武漢市)節度使として卒した。白居易と親交を結び,元白と併称され,二人の間で贈答唱和した多くの詩が残る。

語釈

*殘燈・・・・・・油が泣くなり、消えかかった灯火。
*幢幢・・・・・・揺れて落ち着かないさま。
*九江・・・・・・現・江西省九江市を含む広い一帯
*謫〔たく〕・・・官位を下げて遠くへ追放になる。
*垂死・・・・・・死にかけ。瀕死。死になんなんとす。
*暗風・・・・・・暗闇から吹いてくる風。
*寒窗・・・・・・寒々としてわびしげな窓。冬の窓。

通釈

消えかかった灯火は、ほのおも殆ど無くなり、火影(ほかげ)はくすんで明らかでなく、揺れて落ち着かないさまであり。この夜、あなたが九江郡の司馬に左遷されたということを耳にした。死にかけの病で病臥中なのだが、驚いて、起きあがって坐り直した。暗闇から吹いてくる風が、寒々としてわびしげな窓から雨を吹き込ませてきた。

備考

作者が、白居易が江州司馬に左遷されたことを耳にして作った詩。

範吟

範吟 鈴木精成