富士山(天 213)

吟譜(PDF)

作者:石川丈山

(一五八三~一六七二年)江戸初期の徳川家藩士・漢詩人。 愛知県碧海郡に生まれる。人柄は勇猛だが
読書・書道・茶道・築庭などの風雅も好んだ。大坂夏の陣で殊勲を立てようと一人出陣し、敵将2名を斬ったが、出陣禁止令に背いた罪で謹慎させられた。これがもとで武士を捨て全国を漫遊した。三十歳のころである。その間、諸大名から出仕の要請があったが固辞し続けた。晩年の住居は「詩仙堂」と名づけられ、今なお京都に保存されている。享年九十歳。

語釈

*仙客・・・仙人 不老不死の術を体得した人 霞や露を食い空を飛ぶという。
*神龍・・・風雲を起こすといわれる想像上の動物
*紈素・・・白い練り絹
*白扇・・・白地のままで書画の書かれていない扇

通釈

仙人が来て遊ぶといわれる神聖な富士山の頂きは、雲を突き抜けて高くそびえている。山頂にある洞窟の中の淵には、神龍が年久しく栖んでいると伝えられている。山頂あたりは純白の雪に覆われ、ちょうど白絹(しらぎぬ)を張ったようで、立ち昇る噴煙は、その扇の柄のように見える。まるで東海の大空に白扇が逆さまにかかっているようだ。

範吟

範吟 横山岳精