芙蓉楼にて辛漸を送る(天 212)

吟譜(PDF)

作者:王 昌齢

(六九八~七五五?)江寧(今の南京) の人。 或いは太原の人ともいう。 秘書省校書郎となったが、礼法を無視する奔放な性格が禍いして龍標(現在の湖南省黔陽) に左遷され、 安禄山 の乱の時、 混乱に紛れて勝手に故郷に帰ったために刺史閭丘暁に殺された。 七言絶句の名手で、 特に女人怨情、 辺塞出征の詩に優れたものが多い

語釈

*芙蓉楼・・・・・・・寧(今の南京)の東方鎮江の、長江を見下ろす景勝の地にあった楼。
*寒雨江に連なる・・・寒々とした雨が降り注いで、天と水の区別のつかない様。
*平明・・・・・・・・あけがた。
*玉壺・・・・・・・・白玉で作った壺。

通釈

冷たい雨が揚子江に降り続く中を、昨夜君を送って呉の地までやってきた。そして夜明けがた、君を見送れば、行く手にぼつんと一つ、さびしくそびえ立っ楚山の姿。

洛陽の親友達がもし私のことをたずねたら、玉の壺にもられた氷のように清らかな心、とそう答えてくれ給え。

※南朝・宋の詩人、鮑照(四〇五~四六一)が清さの抽象として「清如玉壺冰」と詠った

範吟

素読・範吟 鈴木精成