富嶽(天 211)

吟譜(PDF)

作者:乃木希典

(一八四九~一九一二年)明治時代の陸軍軍人。長州藩(山口県)江戸屋敷に生まれる。文を吉田松陰の叔父玉木文之進、剣を栗栖(くりす)又助 に学び、また詩歌にも優れ石林子(せきりんし)、石樵(せきしょう)と号した。歩兵大十四連隊長心得として西南戦争に出征し、連隊旗を西郷軍に奪われる屈辱を嘗(な)め、日清戦争では第一旅団長となった。日露戦争では、 第三軍司令官に任命された。明治三十七7年大将。明治天皇の大葬当日静子夫人と共に殉死した。年六十四才。

語釈

*富嶽・・・・・富士山のこと。
*崚・・・・・・山の高く重なるさま・嶺の高くそびえる形容。
*赫灼・・・・・あかあかと光りかがやくさま
*朝暉・・・・・朝日のひかり
*八洲・・・・・大八洲(おおやしま)・日本をいう
*區區・・・・・こまかいさま
*地靈人傑・・・ 土地がらが最もすぐれており・そこに住む人もすぐれていること
*神州・・・・・神の国の意で日本の美称

通釈

富士山は高く美しく千年もかわらぬ姿で聳え、光り輝やく朝日はこの峰より昇り、隈(くま)なく大八洲の国を照らすのである。

あれこれ風景の美しいことばかりをいうのはやめよう、土地がらも、人物もすぐれているのが日本の神州たる所以(ゆえん)である。