夜坐(天 234)

吟譜(PDF)

作者:藤田東湖

(一八〇六~一八五五年)(文化二年~安政二年)・幕末期の水戸藩士。尊皇攘夷推進派の巨頭。名は彪(たけき)、字は斌卿(ひんけい)、東湖は号。幼名武次郎、虎之介 と称し、後藩主より誠之進の名を賜る。水戸藩儒官藤田幽谷の子で幼時より文武の修練に励み父の死後彰考館に入り一時 総裁代理となる。藩主斉昭をたすけ藩政改革に尽力。藩校弘道館設立は藩主徳川斉昭と共に成し遂げたものであり、水戸 学を振興しその中心人物となった。遺(のこ)された「弘道館記」は東湖の草案によるものである。
安政二年十月大地震の時母親を助けようとして逃げ遅れ圧死した。年五十歳。「回天詩史」他著書多し

語釈

*金風・・・秋風のこと。
*颯颯・・・風の吹く音の形容。
*群陰・・・多くの陰。
*溥溥・・・露の多いさま。
*三更・・・夜の12時前後。 真夜中のこと。
*丹心・・・まごころ。

通釈

秋風は梢(こずえ)を鳴らし月の光に沢山の陰を作り出し、玉のような露は多く林全体にしたたっている。
この静寂の中に独り黙坐すれば、真夜中の中天に掛かる明月は、わがまごころを照らすかの様に皎々(こうこう)と 輝いている。

範吟

範吟 鈴木精成