涼州詞(天 246)

吟譜(PDF)

作者:王 翰

(六八七~七二六年)初唐から盛唐の詩人、字は子羽(しう)。并州(へいしゅう 山西省太原)の人。 幼時より豪宕(ごうとう)、秀才にして酒を好み詩もまた能くす。

語釈

*涼州・・・・・西域(せいいき)の胡地(こち) 今の甘粛省(かんしゅくしょう) 武威市で唐代に河西節度使が駐在したところ 西北国境防衛の要塞であった
*涼州詩・・・・唐の開元年間に西涼府都督(ととく)の郭知運(かくちうん)が 玄宗に献じた楽曲 そこの征戍の人達の情を歌ったもの
*葡萄美酒・・・西涼州産の最高級のブドウ酒
*夜光杯・・・・西方地方名産の白玉(大理石の一種)で作った杯で 杯そのものが光を受けて透明に光る 部分が夜の光を感じさせるのである 又一説にはガラスの杯
*琵琶・・・・・中国 朝鮮 日本の弦楽器のひとつ 木製の胴に柄があり四弦(五弦もある)  胴はなすび形でひらたく 長さは六十~一〇六センチメートル  起源はペルシャ・アラビアとされ インド 西域 中国をへて奈良時代に我国に伝来した ここでは胡地特有の馬上の楽器とした
*催・・・・・・(杯を干せと)うながすように (琵琶を)かきならす
*沙場・・・・・(戦場である)砂漠

通釈

北辺、涼州の地に駐屯した出征兵士にとっては、名物の葡萄の美酒を、夜光の杯で飲むのがもっともおもむきがある。 今、それを飲もうとすれば、馬上に酒杯をうながすように琵琶のしらべがかきならされる。たとえ興に乗って今戦にでようとするこの砂漠 に酔い伏すことがあっても、世間の人々よ笑わないで欲しい。明日の命も知れぬ自分達だ、せめてこれ位の振舞いでもしなければとても耐え 切れぬ。昔から遠く西域への戦にかりだされた人達の中で幾人か無事故郷に帰ることができたであろうか。

範吟

範吟 横山岳精