涼州詞(天 247)

吟譜(PDF)

作者:王之渙

(六八八~七四二年)盛唐の詩人。字は季陵(きりょう)。山西省新絳(しんこう)郡の人。一時役人をしたこともあったが 生涯の大部分を在野で過ごした。王昌齢、高適と親しく辺塞詩人として有名である。

語釈

*出塞・・・塞は国境にある要塞 とりでを出てさらに異国に敵を征伐にゆくこと 楽府の題名で涼州詞ともいう
*萬仞・・・中国古代の高さ・深さの単位(八尺・七尺・四尺・五尺六寸などの 諸説があるが七尺説が有力)幾万尺のことで高くそびえる山を形容していったもの
*羌笛・・・西方異民族(胡人)の吹く笛で今のタングート族
*何須・・・する必要はない
*楊柳・・・ここでは折楊柳(別れの曲)の意  *玉門關・・・ 敦煌の西にあり 中国から西に向う 国境にある関所(今の甘粛省)

通釈

黄河は、はるか遠く白雲のただよう夷(えびす)の地にさかのぼって流れ、そのかなたには一つの城塞が 高くそびえる山々のいただきに立っている。この異郷の孤城で兵士らの心にひびいてくるのは、別れを怨む折楊柳の曲だ。だが胡人の笛でなにもそんな悲しい曲などを吹く こともあるまい。春の光は玉門関をこえてここまでさしこんでこないのだから楊柳の芽生えることなどあろうはずがない。 と、王翰の涼州詞と一脈相通ずる兵士の心情を描き出している。

範吟

素読・範吟 鈴木精成