飯森山に白虎隊を弔う(続天 13)

吟譜(PDF)

作者:白鳥省吾

(一八九〇~一九七八年)(明治二十三年~昭和四十八年)大正-昭和時代の詩人。宮城県栗原市築館で生まれる。中学校四年生頃から詩を書くようになる。早稲田大学に入学、後、「夜の遊歩」などの詩を収めた詩集『世界の一人』を若山牧水、太田水穂、前田夕暮の仲介で自費出版し、詩人として文壇にデビューを果たす。『世界の一人』は好評を博し一躍名声を高める。早稲田大学卒業後、『新少年』・『露西亜評論』など、戦前に栄華を極めた雑誌 の編集を担当し、詩人の団体「詩話会」の発行する『日本詩集』や、「詩話会」の発行する『日本詩人』の編集委員も歴任する。また、『日本社会詩人詩集』を福田正夫、賀川豊彦、加藤一夫、百田宗治、富田砕花と共著、『泰西社会詩人詩集』を福田、百田、富田と共訳し、省吾と共に福田・百田・富田の4人が“民衆派詩人”と呼ばれる契機にもなった。一方で、靖国神社の遊就館をうたった「殺戮の殿堂」は日本を代表する反戦詩として注目を集めた。晩年は千葉県に居住を構え、亡くなるまで和洋女子大学の教授を勤めていた。音頭、社歌、小唄、民謡、歌謡を多数作詞した他、校歌の作詞でも知られ、その数は日本全国で二〇〇校を超える。詩集、評論集、随筆等著書も数多く、日本全国に建立された文学碑も三十基を超える。一九七三年 逝去。享年八十三歳

語釈

*颯颯・・・風のさっと吹くさま。
*渓水・・・谷間の水。谷川。
*涓涓・・・水が細く流れるさま。
*古今・・・昔から今に至るまで。
*柄乎・・・輝き明らかなさま。
*錦風・・・秋風。
*吟心・・・詩歌を作る心。詩情。

通釈

ここ飯盛山に来てみてば、さわやかな松風が吹き渡り、あたかも白虎隊の忠魂を弔っているかのようである。又、谷川の水もさらさらと流れて、その清らかな流れは、時の移り変りを洗い清めているかのようでもある。思えば十六、七歳の若者が、主君の為に戦い、遂に力尽きて、ここ飯盛山で壮烈な自刃を遂げた)時は移っても、勝敗を越えたこの少年たちの忠勇義烈の行動は、後の世までも輝きを放ち、その歴史を語るかのように、今、秋風が地上に満ちて、しきりに吟心を呼び起こすのである。