帰雁(続天 51)

吟譜(PDF)

作者:銭起

(七二二~七八〇年?)中唐の詩人、字は仲文、浙江省湖州府の人、三十歳の時、進士に及第、考功朗中から代宗の時、
翰林学士となった。藍田に草堂を設け、王維や裴廸(はいてき)らとも親交を結び五十九歳ころ没した。その詩風は繊細で美しく、
大歴期を代表する詩人として、「大歴の十才子」の一人に数えられている。又、郎士元と共に「銭郎」と称された。

語釈

*瀟湘・・・・・瀟水と湘水。
*等間・・・・・なおざりの意。
*二十五弦・・・湘水の女神が月夜に二十五弦の琴を弾くという伝説がある。
*清怨・・・・・曲の響きが悲しげで心を打つこと。

通釈

雁よ、この美しい瀟湘の地をなおざりにして何故北に帰っていくのだ。水は碧く汀の砂は白く明るく、岸辺の苔も鮮やかで美しい。
きっと湘水の女神が二十五弦の大琴を月夜にかなでる音がするので、その音色の清らかで哀切なのにたえかねて、ここで飛び帰るのだろう

備考

瀟湘八景で有名な風光明媚の地域を織り込んだ美しい漢詩。八景の中に平沙落雁がある。それらを詩人の目で見た漢詩であろうか