建徳江に宿る(続天 72)

吟譜(PDF)

作者:孟浩然

(六八九~七四〇年)・盛唐の詩人。襄陽の人。官途に不遇で、郷里の鹿門山に隠れ棲んだ。作品をみると、官途に不遇ではあるが、官途を目指して、努力をし、奉職を願望した詩もあり、曲折した心理を覗(うかがわ)せる。山水詩に長じている。

語釈

*建徳江・・・「建徳の町を流れる川」
*煙渚・・・・煙霧のたちこめているなかす。
*客愁・・・・旅先でのわびしい思い。旅愁。
*天低樹・・・天が樹木よりも低く垂れ籠めるさま。

通釈

『建徳の町を流れる川でとまる。』本流の方から舟を煙霧のたちこめている中洲(なかす)の方に移して碇泊すれば、日が暮れて、旅先での侘(わ)びしい思いが新たに湧き起こってくる。野原は広くて何もなく、宵闇(よいやみ)の空は樹木よりも低く垂れ籠めて、川の水が清らかなので、川面に映った月影なので、離れたところにある天上の月よりも人(=作者)に近しい感じがする。

備考

建徳の町は作者の旅程では、途上となりで、旅先での不安な気持ちを風景描写に托して述べている。

範吟

吟詠 鈴木精成