閨怨(続天 73)

吟譜(PDF)

作者:王昌齢

(七〇〇年?七五六年?)・盛唐期の詩人。字は少伯。京兆の人。七言絶句に秀で、辺塞詩で有名。

山西省太原に本籍を持ち、京兆・長安に生まれたらしい七二七年に進士となり、祕書省の校書郎から七三四年に博学宏詞科に及第して汜水(河南省)の県尉となったが、奔放な生活ぶりで江寧の丞・竜標(湖南省)の県尉に落とされた。その後、七五五年、安禄山の乱の時に官を辞して故郷に帰るが、刺史の閭丘暁に憎まれて殺された。後に閭丘暁は、安禄山軍の侵攻に対し、唐側の張巡を救援しなかった罪で、唐の張鎬に杖殺された。この時、閭丘暁は「親がいるので、命を助けて欲しい」と言ったが、張鎬は、「王昌齢の親は誰に養ってもらえばいいのか?」と反論し、閭丘暁は押し黙ったと伝えられる。

語釈

*閨怨・・・・妻がその夫と別れている怨みの詩。
*閨中・・・・ねやのうち。閨房。女性の部屋。
*春日・・・・春ののどかな日に。
*翠樓・・・・女性のいる建物。青楼。
*陌頭・・・・路上。道端。路傍。
*楊柳色・・・ヤナギの青々とした色。
*夫壻・・・・おっと。むこ。
*覓封侯・・・諸侯になることをもとめる。手柄を立てる。立身出世を求める。

通釈

閨房にいてかわいがられている若妻には、世の中の愁いというものが分からない。春ののどかな日に、よそおいを凝らして、女性のいる建物に上って、気楽に過ごしている。道端の楊柳の青々とした色を見て、にわかに気付いた。夫に、手柄を立てて、立身出世するようにしむけたことを悔やむ。悔やまれることは、夫に、手柄を立てて、立身出世するようにをしむけたことであった。

範吟

範吟 鈴木精成