江畔独歩花を尋ぬ(続天 82)

吟譜(PDF)

作者:杜甫

(七一二~七七〇)盛唐の詩人。李白ともに唐代最高の詩人。字は子美・少陵と号した。襄陽 (河南省) の人。先祖に晋の学者杜預がおり,祖父は初唐の詩人杜審言(としんげん)。三十五歳頃まで呉・越・斉・趙の間を遊歴、この間に李白・高適と交わり詩を賦したりしている。また進士の試験を受けたが及第せず、長安で困窮の生活を送った。長安に出て仕官を望んだがごく低い身分にとどまり,安禄山の乱に際しての忠誠を賞せられて左拾遺を授けられた。しかし翌年華州に左遷され,そこで飢饉にあって官を捨て蜀の成都へ落ちのびた。成都では節度使厳武から検校工部員外郎の官を与えられ,浣花渓のほとりに草堂を構え,やや落ち着いた生活をおくったが,帰郷を志して成都を離れ,揚子江を下って舟旅を続ける途中,長沙付近で舟中に没した。唐代のみならず,中国最大の詩人として李白と並んで「李杜」と称され,詩聖と呼ばれ,また,その詩はそのまますぐれた歴史であるとして「詩史」といわれる。代表作『北征』『三吏三別』『兵車行』など。

語釈

*江畔・・・・浣花渓のほとり
*黄四娘・・・草堂の近くの村のお婆さんの名。「娘」はむすめの意ではなく、年配の女性の称呼に用いる。
*蹊・・・・・こみち
*朶・・・・・花のついた小枝
*留連・・・・そこに続けている
*恰恰・・・・鳥の啼き声

通釈

黄四娘の家では、花がこみちに咲きみちている。枝が枝を押しつ重なってたれている。いつまでも去らずに花に戯れている蝶は、ときどき舞い上がり、」自由自在に啼く愛らしい鶯は、コウコウと啼きたてている。

範吟

範吟 横山精真