山房春事(続天 101)

吟譜(PDF)

作者:岑 參

(七一五年~七七〇年)盛唐の詩人。河南省南陽の出身。岑嘉州とも称する。詩人・高適と並び称される。七四四年の進士。長く節度使の幕僚として西域にあったが、安禄山の乱があった七五六年に粛宗がいた鳳翔にはせ参じて、杜甫らの推挙により右補闕となり、その十月には粛宗に従って長安に赴く。七五九年に虢州の刺史となり、七六二年に太子中充・殿中侍御史となり関西節度判官を兼ね、七六五年に嘉州の刺史となった。七六八年、官を辞して故郷に帰ろうとしたが途中で反乱軍に阻まれて成都にとどまり、その地で没する。享年五十六歳。

語釈

*梁園・・・・漢代に、文帝の子、梁の孝王が築いた園の名。
*日暮・・・・日暮れ
*亂飛・・・・(隊伍を組んだ群になって飛ぶことはしないで)乱れ飛ぶ。
*鴉・・・・・カラス。
*極目・・・・目の届く限り。見わたす限り。
*蕭條・・・・もの寂しいさま。
*三兩家・・・二、三軒の家
*庭樹・・・・庭の樹木。
*舊時・・・・昔と変わらない。昔ながらの。昔のままの。

通釈

かつての御苑であった梁園の夕暮れ時に、カラスが乱れ飛び。目の届く限りのもの寂しいさまであって、二、三軒の家が見えるだけである。庭に植わっている花木はそこに住んでいた皇族の人たちが死に絶えってしまったことを知らぬげに。春になると、なおまた、昔と変わらない花を著(つ)けている。