夜受降城に登って笛を聞く(天 244)

吟譜(PDF)

作者:李 益

(七四九?~八二七年?)・中唐の詩人。字は君虞(くんぐ)、朧西姑臧(ろうせいこぞう 現甘肅(かんしゅく)省武威(ぶい)県)の人。李賀(りが)と名を並べ七言絶句にすぐれて楽人(がくじん)きそって歌曲の詞にしたという。 久しく辺塞(へんさい)に従軍しのち憲宗(けんそう)に召され、累進して礼部尚書にいたる、李君虞集二巻がある。

語釈

*受降城・・・初め漢の武帝の時 匈奴(きょうど)の降服を受け入れるため塞外(さいがい)に築いたものであるが、唐の時代に突厥(とっけつ トルコ民族)の攻撃を 防ぐため再興した。
*囘樂峯・・・山西省大同府の西五百里にあるという。
*蘆管・・・・蘆(あし)の葉を巻いて管(くだ)にして作った笛、胡笳ともいう。
*征人・・・・出征兵士 遠征中の守備兵。

通釈

囘樂峯の前にひろがる沙(すな)は雪に似て真白である。また受降城外を照らす月の光は霜のようにつめたく輝いている。
蘆笛(ろてき)を吹いているのはどこであろうか、あの物 さびしい笛の音は遠征の兵士達に望郷の念をおこさせてやまないのである。

備考

晩秋の月夜受降城にのぼり胡笳の音を聞いて望郷の念にかられて作った詩といわれる。

範吟

範吟 鈴木精成