芳野に遊ぶ(天 245)

吟譜(PDF)

作者:菅 茶山

(一七四八~一八二七) 名は晋帥、字は礼卿、通称を太仲と称し茶山(ちゃざんともいう)はその号。 寛延元年、
備後神辺(現福山市)に生まれる。京都に遊学し、のち故郷神辺に塾をひらき廉塾といい、 住居を黄葉夕陽村舎と名づける。
詩名高く子弟多し、文政十年八月 八十歳にて没す。 著書に黄葉夕陽村舎詩前後編、その他多数ある。

語釈

*芳野・・・奈良県吉野郡の吉野山一帯をいう
*皚皚・・・雪などの白い形容 桜花を雪に見なしたので使った
*香雲・・・芳(かんば)しい雲 桜花を形容した古語
*團裏・・・固まりの中

通釈

ここ芳野に来て見れば、幾千株もの桜の花がすべて咲いていて、 見渡す限りただ雪の降り敷いたように、一面に白く見える。
どこからともなく、近くで人の話し声が聞こえてくるがそれがどこだか一向に見当がつかない。 声はただ香わしい雲のむらがった中から出て来るのである。

範吟

素読・範吟 鈴木精成