青葉の笛(天 4)

吟譜(PDF)

作者:松口月城

(一八八七~一九八一年)(明治二十年~昭和五十六年)。
名は栄太。月城と号す。福岡市に生まれる。

幼少より秀才の誉れ高く、熊本医学専門学校を卒業、十八歳にして卒業して医者となり、世人を驚かせた。

当時、久留米出身で熊本に住んでいた詩壇の重鎮・宮崎来城に漢詩を学び、以来この道を極め福岡に「月城吟社」を経営し、現代詩壇の雄として活躍、書画にも秀でていた。

九十五歳で没。「月城詩集」がある。我が「岳精会会詩」の作詩者でもある。

語釈

*青葉之笛・・・平敦盛の持っていた笛の名前・竹製の横笛
*一の谷・・・・兵庫県神戸市の鉄拐山(てっかいざん)が海に迫(せ)り出した所
*塞上・・・・・「塞」はとりで ここでは平家の陣営 「上」はほとり
*末路・・・・・一族が滅びゆく哀れな最後

通釈

一の谷の合戦で平家は奮戦したもののついに支えきれず、その後の平家一族の哀れな最後は聞く人を悲しませる。その一の谷の戦いが源氏の勝利のうちに終息したころ、明け方の空には残月がかかっていて、平家の陣営のあたりから聞こえてくる笛の音がある。こんな折、哀愁を誘う見事な笛を吹くものはいったい誰なのであろう。

範吟

範吟 鈴木精成