逸題(天 11)

吟譜(PDF)

作者:山内容堂

(一八二七~一八七二)江戸時代末期の土佐藩主。名は豊信(とよしげ)、容堂は号。

海外の事情に通じた開国論者吉田東洋を登用し、参政に任じ藩政を刷新し朝幕関係の不穏(ふおん)を憂え公武合体を唱えたために 大老井伊直弼によって隠居謹慎を命ぜられたが、のち許され幕府や朝議に参与し公武合体に尽くした。一八六七年将軍徳川慶喜(よしのぶ)に大政奉還実現のためその一翼を担った。明治政府の議定に任ぜられ、一八六九年薩長肥三藩とともに版籍を奉還した。その後時事を論ぜず、悠悠自適詩歌風月を愛し明治五年六月二十一日没す。享年四十六。正二位、中納言。著書に「容堂公遺翰」等がある。

語釈

*逸題・・・特に題をつけない詩 失題 無題
*妖雲・・・あやしいけはいのある雲 ここでは外国の艦船が海辺に出没することを云う
*郊原・・・のはら

通釈

風は怪しげな雲を巻き日も西の山に沈もうとしている。今国家は前途多難の時であり、家の事など考えてはいられない。こうした事は、前々から考えていた事で、そうした中でもゆとりがあるのを誰が知るであろうか。この様に馬を郊外 の原野にとどめ、今を盛りに咲く菜の花を眺めているのである。

範吟

範吟 横山精真