親を夢む(天 27)

吟譜(PDF)

作者:細井平洲

(一七二八~一八〇一年) 江戸中期の儒者。尾張(愛知県)知多郡平洲(ひらしま)村の出身。姓はもと紀(き)と称し紀平洲(きのへいしゅう)ともよばる。 名は徳民(とくみん)、字は世馨(せいけい)、通称甚三郎、平洲または如来(にょらい)山人と号す。

はじめ中西淡渕に学びのち 長崎に出て華音(かおん 中国語)を習うこと三年、母の病により帰郷。二四歳名古屋で塾を開いたが、間もなく江戸に出る。 師淡渕(たんえん)の歿後、叢桂(そうけい)社の門弟も引取り名声一時に上がる。尾州侯の儒官となり米沢藩上杉鷹山(ようざん)藩主の 賓師(ひんし)ともなる。

人となり風流温雅度量にとみ、小事に拘泥(こうでい)せず、享和元年(一八〇一)六月江戸尾州藩邸において没す、七四歳。

語釈

*芳草・・・・香のよい草
*萋萋・・・・草のしげったさま
*歸思・・・・帰心 故郷へ帰りたいと思うこころ
*不勝春・・・春の物思いにたえられない
*高堂・・・・りっぱな家の意であるが 父母の住居を敬っていった

通釈

芳しい草が勢いよく伸び一日一日と成長してゆく様子は、人の心を動かし家に帰りたい気持ちが起こって、 春の物思いにたえられず、いてもたってもおられない。 郷里は遥かに遠く帰ることも出来ない。昨夜夢で年老いた両親に会って元気な姿を見ることが出来、嬉しいことだった。

範吟

範吟 鈴木精成