夏日悟空上人の院に題するの詩(天 48)

吟譜(PDF)

作者:杜荀鶴

(八四六~九〇四)・晩唐の詩人。字は彦之(げんし)、号は九華山人。池(ち)州(安徽省)の人。八九一年四十六歳でようやく進士に及第 し、翰林(かんりん)学士・主客員外知制誥(ちせいこう)などを歴任した。伝説では杜牧の末子といわれている。軽薄な性格とも評されているが、詩 を作るのが巧みで、「滄浪詩話」ではその詩体を杜荀鶴体と呼んでいる。「唐風集」三がある。

語釈

*悟空上人・・・ 人物は不詳。
*院・・・・・・僧の住居 。
*三伏・・・・・ 夏至のあと三番目の庚(かのえ)の日を初伏(しょふく=今の7月中旬) 四番目を中伏(同7月下旬)  立秋後の最初の庚の日を末伏(同8月初旬)といい あわせて三伏と呼ぶ 暑さのもっとも厳しい時期。
*房廊・・・・・ 「房」は部屋 「廊」は廊下 ひさし。
*安禪・・・・・座禅をして雑念を無くす 夏安居座夏(げあんござげ)といって夏にする座禅がある。
*心頭・・・・・こころ。

通釈

暑さの厳しい三伏の時期に、悟空上人は門を閉ざして僧衣をきちんと着ております。その上、強い日差しから住まいを蔭ってくれ る松や竹の樹木もありません。しかし、座禅をして修業に励むには、必ずしも山や川を必要としない。暑いと思う心を消し去れば、火でさえ自然と涼しく感じられるものである

備考

この詩の第三句と第四句は古来より有名な句で、京都の東福寺の福嶋俊翁老師の教示によれば、禅家の「碧巌集(へきがんしゅう)」の第四三則「洞山無寒暑」の話の中にも引用されている。織田信長が天正十年(一五八二)に甲斐の恵林寺(えりんじ)を火攻めにした時、快川 和尚は衆僧とともに楼門に上がり、この句を誦しながら焼死したなどの逸話がある。第四句は「滅得心中火自涼(心中を滅し得たれば火自ずから涼し )」もある。

範吟

素読・範吟 鈴木精成

伴奏

伴奏(2本)

伴奏(6本)