金州城下の作(天 52)

吟譜(PDF)

作者:乃木希典

(一八四九~一九一二年)明治の陸軍軍人。漢詩人。山口県長州藩士の家に生まれる。少年時代から馬術・剣術・弓術・砲術
さらに思想や詩歌を学び、武人としての教育を受けた。

明治政府の樹立後に軍人となり、西南戦争に連隊長として参戦したが、西郷軍に軍旗を奪われる屈辱をなめた。日清戦争では旅団長として旅順を占領した。日露戦争では司令長官として日本軍の勝利に貢献した。

戦後、政府の要職を歴任し、従二位に叙せられ、伯爵を授けられた。尊王の思いが厚く、大正元年九月十三日明治天皇の大葬の日に静子夫人とともに殉死した。享年六十四歳。

語釈

*金州城・・・中国遼寧省遼東半島の南端 旅順港背後の要衝の地にして明治三十七年五月二十六日奥大将の第二軍が奮闘して占領した。
*転・・・・・いよいよ ますます。
*荒涼・・・・あれ果ててさびしい。
*征馬・・・・軍馬
*斜陽・・・・夕日

通釈

山も川も草も木も砲弾の跡が生々しく、見渡すかぎり荒れ果てた光景になっている。戦いがすんだ今もなお血生臭い風が吹いている。

私が乗る軍馬は進もうとせず、兵士もまた黙して語らない。夕陽が傾く金州城外にしばらく茫然とたたずんでいた。

鑑賞

金州城外の無惨な戦場の跡・・・本題は「金州城下の作」といいます。金州の南山は日露両軍が死闘をくりかえした激戦地で、山野は血で染まったのです。乃木将軍の長男勝典(かつすけ)もここで戦死する。将軍は南山に登り、山上より戦死兵の墓標が林立する地を望み、夕日をあびて万感の思いで茫然と立っていた。日本軍はここから南下して旅順を攻撃したのです。

範吟

素読・範吟 鈴木精成

伴奏

伴奏(2本)

伴奏(6本)