
作者:徳富蘇峰
(一八六三~一九五七年) 明治、大正、昭和の評論家、歴史家、漢詩人として有名である。熊本県水俣の出身。名は正敬(まさたか)、通称猪一郎(いいちろう)、 蘇峰はその号。家は代々庄屋兼代官をつとめた。
幼いときから熊本洋学校に学んで、のち同志社に移った。その後上京して 出版社を興し国民新聞を発行した。「近世日本国民史」は後年の作である。昭和三二年没す。九四歳。
語釈
*洛中洛外・・・洛は京都のことをいい 京都の市中と郊外
*破短褐・・・・は笠 褐は布子(ぬのこ) 破れ笠に丈(たけ)の短いそまつな着物
通釈
東山三十六峰は一面の雲に掩(おお)われてさびしく京都の町中も郊外も雨が降りしきっている。
この雨の中を破れ笠をかぶり裾の短い着物をきて、国難に殉じた志士達の墓前に涙を流してぬかずけば、秋気は ことのほか冷々(ひえびえ)と肌に感ずるのである。
範吟
素読・範吟 鈴木精成
伴奏
伴奏(2本)
伴奏(6本)