暁に発す(天 55)

吟譜(PDF)

作者:月田蒙斎

(一八〇七~一八六六年)(文化四 ~ 慶応二年)時習館訓導、儒学者、詩人。名は強、字は伯恕。通称右門のち鉄太郎と改める。蒙斎は号。肥後(熊本)現荒尾市生る。父祖は野原八幡宮司。幼時より頭脳明晰、貧困により学問が思うようにできなかった。

田代是宗の塾に入り、ついで辛島塩井に従学。のち京都の千手旭山に学び山崎闇斎派の実理の学を納める。旭山に従って北陸及び江戸に遊ぶ。天保四年(一八三三)、九州に帰って島原に滞在した後、故郷に帰った。

天保十二年(一八四一)藩命により郷学師となり、その後、時習館訓導に抜擢され、門下生は述べ数百人に及んだ。早くから詩名高く終生程朱学の究明に力を注いだ。詩集、随筆の著書多し。 慶応二年(一八六六)熊本に於いて死亡。唐人町常在院に埋葬され、後に荒尾の月田墓地に改葬された。

語釈

*残月・・・あけがたまで残っている月
*暁風・・・明け方に吹く風。
*秋冷・・・秋の冷やかさ。

通釈

月がまだ西の空ある早朝に出発すれば、したたる露が袂をしっかりと濡らしている。明け方の風が髪を吹いて、ひんやりとした秋の気配が感ぜられる。ふと見れば、巨大な蛇が行くての道を遮るように横たわっているではないか、すわッと刀を抜いて躍りかかって退治しようとしたが、よくよく見れば、それは年を経た松の影であった。