偶成(天 70)

吟譜(PDF)

作者:藤田東湖

(一八〇六~一八五五年)(文化三年~安政二年)・水戸藩の儒臣で幕末の代表的尊王攘夷論者、名は彪(たけき)・号は東湖。生家の東に千波湖があっことにちなむという。徳川斉昭を助けて藩政改革に尽力、弘道館の創設・兵制改革・大砲鋳造を行う。勤倹力行に努めた。安政二年十月二日(一八五五年十一月十一日)に発生した安政の大地震の際、母親を助けようとして落下してきた梁で圧死した。

語釈

*連檣(れんしょう)・・・連なるほばしら、転じて大軍の船。
*落落・・・・・・・・・・安心して。
*雄心・・・・・・・・・・おおしい心。
*三更・・・・・・・・・・今の午前零時前後
*幽窓(ゆうそう)・・・・寝静まった静かなところの窓

通釈

大軍を引き連れ、帆柱を連ねて海を渡り、敵の牙城に迫り、今一戦という時に夢覚めれば身は窓の下に横たわっていた。

夢の中で聞いた波の音は、秋風が雨音とまごうばかりに吹き渡っていたからだろうか。

備考

◎勤王家の作者が夢で夷国(いこく)と戦うのを見て作詞したもの。

*夷国(いこく)・・・えびすの国。野蛮な国