月夜三叉口に舟を泛かぶ(天 74)

吟譜(PDF)

作者:高野蘭亭

(一七〇四~一七五七年) 江戸時代中期の儒者。名は惟馨(いけい)、字は子式(ししき)、蘭亭または東里と号す。江戸の人。荻生徂徠(おぎゅうそらい)の門に入り、学識、抜群であったが十七歳のとき失明、徂徠の助言に従って 漢詩を志した。晩年鎌倉円覚寺のそばに庵を作り死所としたが、宝暦七年江戸において没す。年五十四、.詩作万首に及ぶ。

語釈

*三叉・・・隅田川下流の今の清洲橋附近の俗称 中洲があり今戸川が落ち合い 水流が三つに分かれていたという観月の名所
*扁舟・・・小舟 扁はひらたい

通釈

隅田川の河口に近く、今戸川が落ち込むこのあたりは中洲が川を分かち、 秋の気配が濃く、明月が中天にかかって、その影をうつし大江の水は萬里に遠く流れていく。 興に乗じて澄み切った青空に向かって笛を吹こうとすると、一ひらの雲が私が乗る小舟を 迎えるかのようにただよってきた。

範吟

範吟 横山精真

伴奏

伴奏(2本)

伴奏(6本)