後夜仏法僧鳥を聞く(天 83)

吟譜(PDF)

作者:空海

(七七四~八三五年 平安初期の高僧。真言宗の開祖。讃岐国(さぬきのくに 香川県)多度郡屏風(びょうぶ)ヶ浦の人。俗姓佐伯氏、幼名眞魚(まお)、諡(おくりな)弘法大師。 十八才にして出家。延暦(えんりゃく)二三年(八〇四)遣唐使に従って唐に入り慧果阿闍梨(けいかあじゃり)に会い、真言、秘密両部の法を受け阿闍梨の位と さまざまの法具仏典を授けられ大同元年(八〇六)帰国、高野山に金剛峰寺(こんごうぶじ)を建立(こんりゅう)、のち朝廷より京都の東寺(とうじ)を賜り真言宗の根本 道場とする。諸国を歴遊して諸民を援(たす )ける。数多の著書あり。承和二年(八三五)三月二十一21日没、年六二才たす

語釈

*後夜・・・・・・・佛教では一夜を初夜(そや)中夜(ちゅうや)後夜(ごや)の三夜に分け  後夜は午前5時ごろ
*佛法僧鳥・・・・・「木葉木菟(このはずく)」のこと むくどりくらいの小形のみみずくで 「ブッポーソー」と鳴く
*三寶(佛法僧)・・・仏徒  の三つの宝で仏宝(ぶっぽう 釈迦) 法宝(ほうほう 説教) 僧宝(そうほう 修法者)をいう 。
*雲水・・・・・・・雲と川のながれ
*両両・・・・・・・文明・・明らか

通釈

高野山の静かな林中、暁の草堂に独り坐して無我夢想の境地に居る時、どこからとも なくブッポーソーと鳴く鳥の声がする。鳥は
無心に鳴いているのであろうが、この鳴き声のうちに仏法僧の三宝を悟ったのである。鳥の声と人の心とが、 更に山中の雲と川の流れとまったく一つに融け合って、ここに仏の教えをはっきりと悟ることができた。

範吟

素読・範吟 鈴木精成