志を言う(天 86)

吟譜(PDF)

作者:藤田東湖

(一八〇六~一八五五年)(文化三年~安政二年)江戸末期の儒学者。水戸藩士。幽谷(ゆうこく)の二男。名は彪(たけき)。通称、のうた)」「回天詩史」など。虎之助。藩主徳川斉昭のもとで藩政改革に尽力。また、その思想は尊王攘夷運動に大きな影響を与えた。安政の大地震で圧死。著「正気歌(せいきのうた)」「回天詩史」など。

通釈

附しては郷国を思い、仰いては主君の御身を考える。こうして夜となく昼となく憂いは増し、思いは、この江戸に幽閉の主君斉昭公の身上と水戸の同志たちの境遇とに分かれ飛んで、心が傷むばかりである。ただ喜びとするものは多忙だった頃ととは違って、私もまた幽閉中なので、閑にまかせて書籍に読み耽ることがことだ。錦衣を着け、豪華な食事を取る事を尊しとする者もいるがそれらは私から見れば、浮雲のごとくはかないものだ。

参考

父の幽谷という人は、もともと古着屋の息子という低い身分・・・しかし、その優秀さをかわれて15歳の時に彰考館に大抜擢されるわけですが、優秀な人材なら、身分に関係なく抜擢するという事は、言い換えれば、優秀ではなかったら、たとえ親が彰考館に勤務していても、子供が勤務できるかどうかはわからないわけですので、東湖が、父の後を継いで勤務したというのは、やはり、彼もまた優秀な人材であったという事です。