江天の暮雪(天 92)

吟譜(PDF)

作者:釈龍沢

(一四二二~一五〇〇年)室町-戦国時代の僧。臨済(りんざい)宗。京都建仁寺の宝洲宗衆らに師事。天柱竜済の法をつぐ。真如寺,建仁寺,南禅寺の住持。赤松政則の帰依(きえ)をうけ,三条西実隆ともしたしかった。詩集に「黙雲詩藁」,編著に「錦繍段(きんしゅうだん)」など。七十九歳。播磨(はりま)(兵庫県)出身。別号に黙雲。

語釈

*江天暮雪・・・川辺の夕方の雪模様。
*暮・・・・・・日暮れ。名詞。
*江天・・・・・川の上の空。
*霏霏・・・・・雨や雪などが、甚だしく降るさま。
*釣磯・・・・・釣り場の川原。釣り場の川の水が当たる岩石。
*一蓑・・・・・蓑(みの)を着けた人の姿ひとつ。

通釈

川の上の空模様は暮かけて、雪が、しきりに降りそそいでいる。魚を釣ることをやめて、誰が乗った小舟なのか、釣り場の川の水が当たる岩石のそばに寄り添っている。砂州に棲む水鳥は、降りしきる雪のために飛び立とうとしないし、人の姿も見えなくなってしまったが。遠くの村里で、ただ蓑(みの)を着けた人の姿ひとつ自宅に帰って行くのが見えるだけだ。