小楠公の墓を弔う(天 119)

吟譜(PDF)

作者:杉 孫七郎

(一八三五~一九二〇年)(天保六年~大正九年)・聴雨(ちょうう)と号す。山口県萩の藩士植木五郎右衛門(うえきごろううえもん)の次男として 生まれ、杉 彦之進(すぎ ひこのしん)の養子となる。藩学明倫館に学び、また吉田松陰(よしだしょういん) の教えを受け文久二年松平石見守(まつだいらいわみのかみ)に従い欧州に遊歴し諸般の事業を調査し、また明治 維新前後国事に奔走し重きをなす。県令その他の要職を経て遂に東宮職御用掛(とうぐうしょくごようかかり) 皇太后大夫(こうたいごうだいふ)、枢府(すうふ)顧問官等を歴任。能書家として知られる。大正九年五月没す。 年八十六歳。

語釈

*一絲懸・・・・一本の糸の如く楠公の一家にかかっている。
*潜然・・・・・涙の流れるかたち。
*也來此地・・・又四條畷の地に来て。

通釈

南朝の命脈は一本の糸即ち楠公一家にかかっている。今は楠公も戦死し、 その家も亡びたがその名は永く伝わっている。限りなき寂しさを誘う秋風のもと湊川にて大楠公の忠烈に泣いて来たが、今又四條畷の小楠公の墓の前に立って 更に同じ涙を流すのである。

備考

この詩は、四條畷神社の宝物として、今も大切に保存されている。