秋浦の歌(天 135)

吟譜(PDF)

作者:李白

(七〇一~七六二年) 杜甫と共に盛唐時代の二大詩人。幼少の頃より 詩をつくり、剣術を学ぶなど天才的才能の持主酒を愛しその詩は自由奔放、才気煥発、変幻自在で「詩仙」の呼称にふさわしい。大酔して水中に映った月を捉えようとして溺れ死んだという伝説がある。

語釈

*秋浦・・・地名。現・安徽省南部の長江南岸の貴池市の西側すぐ。秋浦河が北流して長江に注いでいる。
*白髪・・・白い髪
*丈・・・・尺貫法の長さの単位 一丈は約三メートル
*愁・・・・予測される悪い事態に対する心配・気づかい。
*縁・・・・○○が原因で
*以箇・・・このように
*明鏡・・・曇りのない
*鏡裏・・・内・なか
*何処・・・どこ
*秋霜・・・秋の霜・霜が降ったように白く成った髪の毛の形容。

通釈

なんと白髪が伸びた事か三千丈もありそうだ。色々心配事が多いから・・・こう長くなったのだろう。鏡に写るのは確かに自分だが まるで知らない人のようだ。いったい何処でこんなに白髪頭になったのだろう。

解説

李白の晩年の作と言われています。おとぼけ詩とでも云うのでしょうか、これはもう李白でなければ出来ないようなユーモアのある詩です。李白は安徽省南部当塗県の知事が遠縁に当たるため、晩年はここに身を寄せていた時亡くなったと言われています。ですから亡くなるまでの二~三年間は安徽省南部の長江沿いの町をうろうろしながら詩を作っていたものと思われます。この秋浦歌が作られた秋浦の町も安徽省南部にあります。李白が作った詩に出てくる天門山や宣城の街も同じく安徽省南部にあります。