睡起偶成(天 153)

吟譜(PDF)

作者:王陽明

(一四七二~一五二八年)明代の儒学者、哲学者、政治家。陽明学の祖。名は守仁。字は伯安。陽明先生と称された。浙江省余姚の人。「知行合一」(??一念の発動する、すなわちこれ行である??)、「致良知」(??内心修養の方法??)の説を唱えた。著に『伝習録』がある。

語釈

*四十餘年・・・作者が自覚した年齢になる。
*睡夢中・・・・夢の中。眠って。夢を見ていた。自覚がなかったことをいう。
*朦朧・・・・・おぼろげに見えるさま。
*高樓・・・・・たかどの。
*曉鐘・・・・・夜明けを告げる鐘。黎明を告げる鐘。

通釈

今までの四十余年は眠っている時の夢の中であった。今は目を覚ましたが、初めのうちはぼんやりとしていた。
太陽は、正午をとっくに過ぎているのが、わたしは分からなかった。 たかどので起ち上がって、夜明けを告げる鐘を打ち鳴らそう。

備考

眠りより覚めて偶然にできた詩。哲学者の作品なので、含むところは深いものがあろうが、一般的な字義、語義、語法に従って解釈する。なお、大塩平八郎はこの詩を愛したという。

◎偶成=然にできた詩。ふとした思いつきでできた詩。普通は、絶句に多く見られる詩題。