清明(天 156)

吟譜(PDF)

作者:杜牧

(八〇三~八五二年)晩唐の詩人。字は牧之[ぼくし]、号は樊川[はんせん]、陝西省長安県の人。 名家の出身にして八二八年進士に及第後、地方、中央の官を歴任し中書舎人(ちゅうしょしゃじん)となって没す。資性剛直、容姿美 しく歌舞を好み、青楼に浮名を流したこともあった。樊川文集二十巻、樊川詩集七巻あり、阿房宮賦[あぼうきゅ うふ]は早年の作にして文名を高めた。年五十歳。

語釈

*清明・・・・・ 清明節の日。 二十四節気の一つで春分の日から数えて十五日目
*粉粉・・・・・多く。 さかんなさま。
*路上行人・・・ 路傍の旅人で。
*欲斷魂・・・・心が滅入る。 もの悲しくなる。
*借問・・・・・借は仮。 試みに問うこと。

通釈

清明の季節であるのに、雨は降りしきっている。雨やどりをしていた一人の旅人は、 酒でものんで滅入る心を晴らそうと思い、通り合わせた牛飼いの少年に、近くに酒屋はないかと尋ねると、 はるかかなた、杏の花さく村を指さして教えるのであった。

備考

杏(あんず)の花咲く村落の風景が絵の如く浮かぶ、絵画的な叙景詩である。

範吟

範吟 磯田精信