藤樹書院に過る(天 188)

吟譜(PDF)

作者:伊藤 東涯

(一六七〇~一七三六年)江戸中期の儒者、名は長胤、通称は源蔵、東涯は号。 仁齋の長子で、寛文十年京都堀川に生まれた。博学多才、寡黙、謹厳、人の短所を口にしない という人柄であった。父の唱えた「古義学」を継承し多くの門人を育てた。元文元年七月没す。年六十七歳

語釈

*藤樹書院・・・中江藤樹が生地江州小川村(現在の滋賀県高島郡安曇川町小川)で師弟を教導した跡をいう
*訓義方・・・・正しい道を以って師弟を教訓すること
*絃誦・・・・・絃は絃歌 誦は誦読 中国では琴に合わせて書物を朗読したので 読書 学問のことをいう
*茅堂・・・・・茅ぶきの家

通釈

久しい以前から近江の国の西部に残っている藤樹書院の名は聞いていた。 その書院は五十年ほど前に、近江聖人として尊敬されていた中江藤樹先生が、人の履(ふ)み行うべき 正しい道や学問を教えた所である。今日はじめて、教化の地へ来てみると、藤樹の由来となる藤が古木となって、その影は茅葺の 書院を掩って当時の面影をとどめているのである。