秋尽く(続天 2)

吟譜(PDF)

作者:館 柳湾

(一七六二~一八四四年)(宝暦十二年~天保十五年)、江戸時代後期の日本の漢詩人・書家である。本姓は小山氏、養子となって館を名乗る。名を機、字は枢卿、通称を雄次郎。柳湾の号は、故郷である信濃川河口の柳のある入り江に因んでいる。別号に石香斎・三十六湾外史などがある。

柳湾は、温厚な性格で寡黙であり、色白で背が高く、酒を嗜むことなく一日に一升の飯を食べたという。実直な役人として上司の信任が篤く加えて領民思いだった。師の亀田鵬斎が寛政異学の禁のためほとんどの門弟を失ったが、柳湾はその後も師弟の関係を続けていることから義に篤い人物だったと思われる。最も詩と書に巧みだったが、和歌と篆刻(てんこく)も好んだ。中井敬所の『日本印人伝』にその名が見える。多くの著作を刊行し、江戸庶民の人気を博した。詩人として順風満帆で幸福な人生を送った。息子の館霞舫は画家となっている。

通釈

秋の終り(晩秋) 静かに流れゆく時の流れの中で空しさを感じながら驚いている。ひっそりした屋敷の中で独り座っていると、遥か昔のことなどを思い出す。老いの寂しさは落ち葉の如く掃いても掃いても尽きることがない。茂った樹の中にかさかさという晩秋の音を聞きながら今年も又あきを送るのである。