阿山禺嶺(続天 3)

吟譜(PDF)

作者:賴 山陽

(一七八〇~一八三二年)(安永九年~天保三)、江戸後期の人、広島藩士で朱子学者の頼春水(しゅんすい)の長男として、大阪の江戸堀に生れる。名は襄(のぼる)、字(あざな)は子成、号は山陽。史家、広島藩士尾藤二洲の門に入り昌平黌( しょうへいこう)に学ぶ。尊皇の志厚く、豪放磊落・孝心厚く日本外史など著述詩作にも専念した。十八歳で江戸に遊学した。二十一歳京都 に走り脱藩の罪により幽閉される。天保三年九月病のため没。五十三歳。

語釈

*阿嵎嶺・・・阿久根のことで鹿児島県の西海岸にあり湾口に奇巌並立する。
*危礁・・・・礁はかくれ岩。波の動きで見え隠れする岩。
*大濤・・・・荒波。大波。
*鶻影・・・・鶻はあさきどり。鳩属 体青黒色で尾は短くよく囀(さえず)る。又たかやはやぶさの類ともいう。ここでははやぶさの飛ぶ影

通釈

奇岩怪石が波間(なみま)に乱れ立っている。目を見張って遠く西南を眺(なが)める と、海水が渺茫(びょうぼう)として山一つ見えない。

ただ鳥の影が水面すれすれに旋回(せんかい)していて、先ほどまで見えていた白帆(しらほ)の影もいつしか 水平線の彼方に消えてしまった。天と水が一つに連なっているところ恐らくあの辺りが台湾だろう。