吾妻橋畔を過ぎて感有り(続天 4)

吟譜(PDF)

作者:藤田東湖

(一八〇六~一八五五年)江戸時代後期の武士・儒者。文化三年藤田幽谷の次男。常陸水戸藩士。徳川斉昭を藩主に擁立し、以後腹心として藩政改革を推進。斉昭が謹慎処分をうけると免職され幽閉されるが一八五三年(嘉永六年)斉昭の幕政参加とともに海防掛、側用人、学校奉行などをつとめ江戸で活躍。「弘道館記述義」は尊攘家に影響をあたえた。安政二年十月二日の大地震の際、小石川藩邸内で死去。五十歳。名は彪(たけし)。字(あざな)は斌卿(ひんけい)。通称は誠之進。著作に「回天詩史」など。

語釈

*遨遊(ごうゆう)・・・きままにあそぶ。
*白首(はくしゅ)・・・白髪の頭
*覊愁(きしゅう)・・・旅愁

通釈

青年時代に桜の花の下を銀の鞍に跨り、月下に舟を浮かべて豪遊したが、今、白髪の囚人となってこの地を過ぎれば、川いっぱいの風雨が旅愁をそそるのみで、すべて一場の夢と化してしまった。