海を望む(続天 18)

吟譜(PDF)

作者:藤井 竹外

(一八〇七年~一八六六年)徳川末期の詩儒。名は啓(けい)、字は士開(しかい)、竹外又は雨香仙史(うこうせんし)と号す。 文化4年摂津高槻藩の名家に生まれる。頼山陽に学び、梁川星巌、廣瀬淡窓等と交わる。絶句に秀で絶句竹外の称あり。生涯詩酒快適にして慶応二年七月没す、年六十。

語釈

*鵬際・・・・鵬(おおとり)の飛び翔(か)ける大空
*九萬天・・・九万里の意味、大空の広大さを形容した語
*無人島・・・人の住んでいない島、ここでは小笠原島を指す
*狂浪・・・・激しく荒れ狂う浪
*奔馬・・・・あばれ馬、勢いのよいたとえ。
*巉礁・・・・巉は切り立って険しいさま、礁は水面に見え隠れする岩

通釈

鵬のかけめぐる大空は晴れわたっていて、海は果てしなく広く望まれる。かねて聞いていた無人島というのは 、どのあたりにあるのであろうか。島は見えないが、多分そのあたりにあるのだろうと思われる海上に、遠く沖から風にのって 狂い寄せる浪はまるで奔馬のような勢いで寄せて来て、たちまち険しい岩島にぶつかり、砕け散って烟となって飛び散る、誠に壮快な 眺めである。