宇文六を送る(続天 19)

吟譜(PDF)

作者:常 建

(七〇八~不詳)盛唐の詩人。字は休文。開元年間の人。開元十五年進士となる。進士となるも、致仕。放浪の後、鄂渚(がくしょ)に隠居す。この鄂渚(がくしょ)とは、地名なのか、場所を表す言葉(湖北省の水郷地帯の意)なのか、目下不明。

語釈

*送宇文六・・・宇文六を見送る。宇文六は名前。宇文家の六番目の男子。宇文(うぶん)は復姓。六は排行。
*花・・・・・・恐らく赤い花。
*映・・・・・・はえる。照り映える。
*垂楊・・・・・しだれやなぎ。
*漢水・・・・・現在の武漢(漢口、漢陽)で長江に合流する川の名。陝西省に発して、湖北省襄陽、襄樊を経て漢口に至る大河。
*微風・・・・・そよ風。かすかに吹く風。
*林裏・・・・・林の中(から)。木の茂み(から)。
*一枝・・・・・一本の枝。
*輕・・・・・・軽やかである。
*即今・・・・・目下。只今。
*江北・・・・・「長江の北側」の地方。宇文六がこれから向かう所になる。
*還・・・・・・なおもまた。また。
*如此・・・・・このようである。かくのごとし。
*愁殺・・・・・ひどく愁えさせる。うれえる。悲しむ。
*江南・・・・・普通は長江下流の南岸一帯の風光明媚で、気候が温和で、物産が豊かな江南地方を指すが、ここでは、「川の南」「長江の南側」の意で使っている。作者が留まっている所であり、現在二人が別れを告げようとしている所になる。
*離別情・・・・別れの思い。

通釈

赤い花は、緑色のしだれやなぎに映えて、漢水の流れは清らかであり。そよ風が林の中から吹いてきて、一本の枝を軽やかに揺らした。目下の江北もまたこのようのどかな春景色の中にあるのだろう。ここ、江南の地で、別離の思いにひどく愁えている。

範吟

範吟 鈴木精成