応制天の橋立(続天 21)

吟譜(PDF)

作者:釈希世

(一四〇三~一四八八年)室町時代の禅僧。室町中期の五山文学者。法諱は霊元、号は村庵、希世は号である。京都に生まれ。幼少より南禅寺の門に入り、六歳から書を読み始めた。記憶力、文章力に優れ、その名文は周囲の人を驚かせた。八歳の時、後小松天皇に拝し、詩を賦したことが、高く評価され、その後「八歳神童」と呼ばれた。十七歳で剃髪(ていはつ)し善住庵に住み、惟肖得厳、江西龍派などに師事して学問に励んだ。三十歳の時には、内外の書を読み、これを通暁(つうぎょう)していたという。一四八三年南禅寺内に聴松院を建てて住んだが、一四八九年六月、八十六歳で没した。

語釈

*応制・・・・天子の命により詩文を作ること。
*碧海・・・・青い海。
*仙蹤・・・・仙人の足あと。
*龍燈・・・・海上に明かりがつながったように見える現象
*文殊堂・・・「三人寄れば文殊の智恵」で知られる臨済宗の古刹。

通釈

青海原の中央に長い堤の六里(実は二十八丁)に渡る松林があり、天の橋立の絶景は仙人の遊んだ所としか思えないほど見事な眺めである。
夜更けまで人は海中に現れる龍燈を待っているが、そうしている間に月は落ち、文殊堂の鐘の音が海を渡って聞こえてきた。

備考

五山文学・・・鎌倉末期から江戸初期にかけて、京都五山・鎌倉五山の禅僧たちにより書かれた漢詩文・日記・語録の総称。

範吟

素読・範吟 鈴木精成