桶狭間を過ぐ(続天 22)

吟譜(PDF)

作者:太田錦城

(一七六五年~一八二五年)(明和二年~文政八年)、江戸中期の漢学者(折衷学派)。石川県加賀の人。名は元貞、字は公幹。号は錦城。加賀大聖寺の医師・本草学者大田玄覚の子、藩儒樫田北岸の弟で太田を継いだ。京都に出て皆川淇園(きえん)に学び、江戸に出て折衷・考証の学を以って一家をなす。

通釈

荒れた原野の古い塚の前に佇むと思いは当時の信長の戦いが駆け廻る。此処で今川の軍勢は、勝利に酔って、武将たちは驕り高ぶり休んでいた。突然怪しい風と共に、曇って来たかと思う間に、忽ち昼間にも拘らず一変し暗くなり風雨となった。近づいていた信長軍、雨が止むのを期に一気に攻め込んだ、この奇襲に今川軍は仰天、天から兵が降って来たかと驚いて、ついに敗北してしまった。

備考

桶狭間の戦いを詠った詩。永禄三年(一五六〇年)尾張の領主織田信長が、駿河・遠江・三河の領主今川義元の十倍に余る大軍を打ち破り近世という時代の幕を開けた日本史上特筆すべき戦い。

範吟

範吟 鈴木精成