王昌齢が龍標の尉に左遷せらるるを聞き遥かに此の寄有り(続天 25)

吟譜(PDF)

作者:李白

(七〇一~七六二年)盛唐の詩人。字は太白。自ら青蓮居士と号する。世に詩仙と称される。西域・隴西の成紀の人で、四川で育つ。若くして諸国を漫遊し、後に出仕して、翰林供奉となるが高力士の讒言に遭い、退けられる安史の乱では苦労をし、後、永王が謀亂を起こしたのに際し、幕僚となっていたため、罪を得て夜郎にながされ、やがて赦された。

語釈

*王昌齡・・・詩人。李白の友人。
*龍標・・・・湖南省西南部にある地名。
*左遷・・・・それまでよりも低い官職、地位におとすこと。
*楊花・・・・柳絮(りゅうじょ)。晩春、初夏の風物詩でもある。あてどもなく風に吹かれてさすらうことをも指す。
*子規・・・・ホトトギス。哀しげな啼き声がする鳥とされ、夏の季節を表す鳥である。
*五渓・・・・湖南省東北部の常徳附近をいう。洞庭湖に近い。雄渓、渓、酉渓、渓、辰渓の五つの渓のこと。
*愁心・・・・愁いの思い。
*明月・・・・澄み渡った月。

通釈

王昌齢が低い官職におとされて、地方の竜標に出されたとのことを聞いて、この手紙を出した。

風にさすらう柳絮は、すっかり散り尽くして、ホトトギスが啼いている(夏がやってきた)。竜標への(旅路は、もう已に)五渓を通り過ぎたとのことを聞いた。わたしは、愁いの思いを明月に託して伝えてもらうので、わたしの愁いの思いは風に吹かれて、真っ直ぐに夜郎の西へ飛んで行け。